読書初心者が読んで良かった本を紹介する

一昨年の夏から本格的に本を読むようになった。つまり、「趣味は読書」と言い始めて1年半近く経った。それまでは、読む本と言えばラノベか、それ以外は年に数冊といった程度だった。

本を読み始めるきっかけとなったのは火花だった。ラノベばかり読んでいたので、文学作品が新鮮で非常に面白かった。

nmzfish.hatenablog.com

それから、多くの本を読んだ。と言っても、およそ50冊程度である。その中には、名前は聞いたことがあるが読んだことのない本や、なぜ今までこれを読んでこなかったのか、というような名著が含まれている。本記事では、それらの良かった点も含めて数冊紹介する。ただし、ジャンルは生物学、歴史学SF小説とかなり偏りがある。以下に紹介する本を示す.

  1. 利己的な遺伝子
  2. ガリヴァー旅行記
  3. ロミオとジュリエット
  4. 銃・病原菌・鉄
  5. ニューロマンサー

利己的な遺伝子

利己的な遺伝子 40周年記念版

利己的な遺伝子 40周年記念版

 

最初に紹介するのは、リチャード・ドーキンス著の「利己的な遺伝子」である。淘汰の最小単位は遺伝子であるとし、淘汰から逃れられるのは利己的な遺伝子だとする利己的遺伝子論を広く認知させた本である。生物学の用語が多々用いられるので、淘汰が何なのか、進化論とは何なのかを最低限理解できていないと全く理解できないかもしれない。K・ローレンツ著の「攻撃」のように、生物が備えている特徴は種の保存のためにあるとする利他的遺伝子論が我々の根底にある*1が、それらを覆す数々の例が紹介される。

例えば、利他的な個体が急速に遺伝子プール中にその割合を増やしていったとして、ある一定の割合を超えたところで、今度は利己的個体のいいカモになる。利他的に見える行為とは、一見、「純粋に利他的な行為」に見える。しかし、純粋に利他的な個体はただのカモである。しかし、もし「自らに利益をもたらしてくれた個体には利他的に振舞うが、そうでない個体には利益は与えない個体」がいたらどうだろう。この個体とはすなわち、「利他的に見えるが実のところ利己的な個体」なのである。自らの利益のために他者に優しくしている。淘汰から逃れられる個体とはそのような個体なのである。

蜂の話も面白い。他の働き蜂のために自らを犠牲にして侵入者から巣を守る蜂などは、純粋に利他的な個体に見える。だがしかし、これは血縁度の概念が頭にないせいである。血縁度が高い方を優先して守るというルールがあるのだ。それも当然。その方がより自らの遺伝子を遺伝子プール中に増やすことができるからだ。

本書は遺伝子や生物の本質を教えてくれる本である。帯には「これを読まずに世界は語れない」と書かれている。まさにその通りである。本書を読む前と後では、生物に対する認識が全く違う。我々は遺伝子の乗り物にすぎない。生物なら読んでおきたい書籍

ガリヴァー旅行記

ガリヴァー旅行記 (岩波文庫)

ガリヴァー旅行記 (岩波文庫)

 

次に紹介するのは、スウィフト著の「ガリヴァー旅行記」である。ガリヴァー旅行記という名前自体は、絵本で読んだり聞いたりした人は多いと思う。主人公が小人の国へ漂流し、脱出したかと思えば今度は巨人の国へ流れついてしまうというストーリーは有名だ。絵本は大抵ここで終わる。しかし、オリジナルの小説は、実は、痛烈にイギリス社会や、人間を批判する風刺文学である。詳細はwikipediaを参照。当時流行っていた旅行記形式で、小人や巨人や馬の国へまるで実際に出向いたかのような日記形式で書かれている。時代が違うのであまり実感はないが、王侯貴族の腐敗や学問の為の科学など、前時代的な文明社会に流れ着いた著者の旅行記と言う形で描かれる。最終的には、ほぼ直接的に人間を批判する内容となり、主人公は人間を嫌悪するようになる。人間なら読んでおきたい作品

ロミオとジュリエット

シェイクスピア全集 (2) ロミオとジュリエット (ちくま文庫)
 

ウィリアム・シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」である。名前だけなら誰もが聞いたことがあるだろう。ではストーリーはどうか。「ロミオとジュリエットはどのような物語か」と聞いて、あらすじを答えられる人は少ないのではないだろうか。私もその一人であった。以前まで「ロマンチックなラブロマンス」程度の認識だったが、その程度の作品ではない。モンタギュー家のロミオキャピュレット家のジュリエットは、それぞれの家の長男と令嬢であり、両家は仲が悪い。この2人の恋など許されない。しかし、友人にキャピュレット家のパーティに連れてこられたロミオは、ジュリエットに一目惚れしてしまう。ジュリエットも同様に、ロミオに一目惚れする。その直後、有名なバルコニーでのやり取りがある。ロミオの傍から見ると恥ずかしくなるような情熱的で甘いセリフも、ジュリエットはロミオにメロメロなのでうっとりと聞く様子が頭に浮かぶ。喜劇のような足取りで物語が進むが、2人は「仲の悪い家同士」という大きなしがらみのせいで結ばれない。ここで、ジュリエットがあの有名な名言を口にする

What's in a name?

That which we call a rose by any other name would smell as sweet.

 

でも、名前が一体なんだろう?

私たちがバラと呼んでいるあの花の、名前がなんと変わろうとも、薫りに違いはないはずよ。

ロミオとジュリエット (新潮文庫)

ロミオはモンタギュー家のロミオというだけで、ジュリエットと結ばれない。名前さえ違えば!という、純粋な乙女の嘆きの響きが美しい。ちなみに、ジュリエットは13歳である。ここからどのようにして悲劇と言われる終わりを迎えるかは、ぜひ読んで確認してみて欲しい。ロミオとジュリエットをモチーフにしたアニメ*2もあり、海外ドラマを見ていると時折引用されることもある*3一般教養として読んでおきたい作品

銃・病原菌・鉄

ジャレド・ダイアモンド著の「銃・病原菌・鉄」である。著者であるジャレド・ダイアモンド氏が、独立前のニューギニア*4へ鳥類の調査に訪れた時に、現地の政治家であるヤリと知り合う。当時はまだオーストラリアの管理下にあったニューギニアでは、依然として欧米人との格差があった。なぜこのような格差が生じてしまったのかとヤリに質問された著者が、25年越しに回答として出版したものが本書である。現代にも残る不均衡を生み出した原因は、西暦1500年時点で既に存在した不均衡である。既に鉄製武具を用いていたヨーロッパ人は、船を用い世界各地へ赴き、征服活動を行ってきた。その不均衡がなぜ生じたのかという究極の要因を本書では示している。

ちなみに、似たような内容の書籍として、「サピエンス全史」が挙げられる。サピエンス全史は人類の全歴史を簡潔に述べた書籍であり、言わば広く浅くであった。一方、銃・病原菌・鉄は、サピエンス全史における農業の発達帝国の辺りを深く掘り下げた内容となっている。簡潔に述べてしまうと、ヨーロッパ人が優位に立てたのは銃・病原菌・鉄のお陰だったという内容。これらの開発がなぜ東洋ではなく西洋で行われたのかという疑問については、西洋人が優れた人種であったからという訳ではない。白人至上主義の方は考えを改める書籍だろう。地球人なら読んでおきたい作品

ニューロマンサー

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)

 

ウィリアム・ギブスン作の「ニューロマンサー」である。言わずと知れたSFの超名作。「マトリックスの原材料」「攻殻機動隊に最も影響を与えた作品」「サイバーパンクの元祖」等々、SFに与えた影響は計り知れない。鬼哭街RD潜脳調査室、等々強く影響を受けた作品も多い。世界中に張り巡らされたインターネット網に意識を接続、人体とコンピュータの結合、AI、これらサイバーパンクのイメージを決定的なものにした作品である。SF小説を読み漁っていた時期に、次は何を読もうかと調べていたのだが、そこかしこで「ニューロマンサー」という名前を見た。有名なのだろうと、思い切って読んでみたところ、1周目は訳が分からなかったが、解説を読みながら2周目を読んでみたら内容がスッと入ってきた。まず、ネーミングセンスが素晴らしい。例えば、主人公がマトリックス(電脳空間)へジャックイン(意識を没入)するのに使う機器が「オノ・センダイ サイバースペース7」。一歩間違えばダサい認定されそうだが、1980年代から見た近未来という点を考慮すればワクワクしてくる。これが手垢のついていないサイバーパンクか、と。SFファンなら読んでおきたい作品。

*1:例えば蜂

*2:寄宿学校のジュリエット

*3:ホワイトカラー

*4:1972年